バブル期ディーラーマン回顧録・AE101レビンの展示車がお店にやってきた!

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回顧録

キッズ向けの話題とは一味違った連載企画。バブル期に自動車ディーラーで働いていた、くるまキッズ編集長の回顧録です。第1回は、今をさかのぼること30年前、1991年待望のAE101カローラレビンの発売と、ディーラーに展示車が納車された時のお話です。

トヨタ カローラ レビン CM AE101 Toyota Corolla LEVIN Ad AE101

若者がクーペを選んでいた時代

私が東京のトヨタ系ディーラーで働いていたのは、バブルの崩壊が起こった1990年代前半です。まあバブルが崩壊したとはいえ、世の中に影響が出るのは徐々にでしたから、まだバブルの色が濃かった時代でした。それこそ、「ここで一番高い車をくれ」なんておじさんも来店していましたからね。

一方で若者にも車はステイタスな時代でしたから、「お金を貯めていい車を買う」という目標をもって働いていた人も多かった。そんな若者が最初に乗る車として人気だったのが、カローラレビン、スプリンタートレノ。今でこそレビン、トレノといえばAE86の印象が強いのですが、90年代前半では後継のAE92も大人気だったんです。

AE86は当時からバリバリの走り屋志向、AE 92はデートカー志向といった印象がありました。実際AE 86は当時でもバリバリの改造車が多く、AE 92はノーマルや小改造のまま乗る方が多かった。特に私が勤めていたのはメーカー系ディーラーということもあって、バリバリ改造のAE86はほとんど入庫せず、ノーマルのAE 92に触れる機会のほうが多かったですね。

今でこそ絶滅寸前のAE 92ですが、当時はインテグラやプレリュード等と並ぶデートカーでしたから、ディーラーで修理に回ってくる台数も多かった。今はミニバンや軽自動車という実利を求めてた車を買うことが基本になっていますが、当時若者の乗る車といえばスポーツクーペ、もしくはテラノかハイラックスサーフなどの四駆。3ドアハッチも玄人好みですし、ワゴンにいたっては「おじさんの乗るカッコ悪い車」という印象がありましたから、当時の価値観は、「形がかっこいい車に乗りたい」という意識がまだ残っていたと思います。

実際、AE 92って今見てもかっこよくないですか? 直線貴重のスタイリングはシャープですし、80年代のトヨタ車らしい魅力にあふれていたと思います。エンジンは低速が薄く、マニュアル車が入庫すると嫌な気持ちになることもありましたが(工場内の取り回しが大変)、車の形自体は嫌いではありませんでした。

トヨタ カローラ レビン CM AE92 Toyota Corolla LEVIN Ad AE92

大ヒット作の後継車として高まる期待

そんなAE 92がモデルチェンジする、という話はディーラーでも話題でした。まぁ「今度は20バルブだぞ」「スーパーストラットサスペンション!」みたいな話はスクープ雑誌のほうが早くて、どんな装備があるのか、という話題はディーラーのペーペー程度では、一般の方と情報量の差はなかったと思います(もちろん、カタログと展示車を見るのは、当然ディーラーのほうが早かったのですが)。

AE 101への期待値は、ディーラー勤めの人間にとっても相当なものでした。なにせ伝説のAE 86、ヒット作のAE 92と続く売れ筋の車ですから、「新型のAE101はどんなにすごいのか?」と期待は高まっていました。たしかAE 101の展示車が入庫した日は、多くのメカニックや社員が「話題の車をひと目みよう」とディーラーに残っていました。

で、実際に見たAE101の印象は……「うーん無難かなぁ」。ディーラーでもちょっと微妙な空気だった記憶があります。エンジンルームを開けて、「これが20バルブの新4AGかぁ」とか、フェンダーを押しながら「スーパーストラット硬てぇ!」とか色々触っても、沸き立つものがあまり……。まぁ性能的なものは乗ってみないとわからないというのはあるでしょうけど、一方でかっこいい車は佇まいもかっこいいもの。見た目のインパクトが薄かったというのが、逆に印象に残りました(個人の感想です)。

悪くないんだけど、何かが足りない。何が満たされなかったのだろう……。

90年代のトヨタのデザインはST185セリカなどに代表されるように、ちょっとずんぐりとした印象を感じさせました。90年代はカローラもカムリも全体に厚みが増して、80年代のトヨタ車らいし角ばったシャープな印象が消えていったと感じます。それが新しい方向性のデザインだったのかもしれませんが、個人的にはあまり好きな方向性ではありませんでした。

なにかデザインのアイデンティティを失ってしまったような感じがしたんです。今回からイメージカラーが黒メインになったことも、印象の薄さを際立たせていたのかもしれません(個人の感想です)。

もちろん技術的にはものすごい進化を果たしていましたし、シビックとのライバル争いもあり、1600ccクラスでは非常に力の入った車だったと思います。確かこの時代のトヨタ車からドアにサイドドアビームが入ったり、安全性の向上にも力が注がれていたり(それゆえ重量増もしていますが)、またエンジンルームのクリアランスも確保されており、AE100系のカローラやAE101のレビンは「整備しやすい」と感じた記憶があります。整備性という意味では、80年代のST165セリカGT-FOURやMR2は本当に地獄でしたからね……。

ただ、AE 86が走り屋志向、AE 92がデート志向という印象が強かった中で、AE 92のFF路線を引き継ぎつつ、走りに振ったあたりに若干の違和感はありました。実際、ディーラーのメカニックたちの間では、「新レビンはFRで出てほしい」という機運が強かったので、「すごい装備だけどFFかぁ」という残念感はぬぐえませんでした。

一方で多くのAE 92ユーザー(もちろんAE 92でも走りを突き詰めていた方もいると思いますが)にとっては、そこまで高性能、新装備という点は魅力にはならなかったのかも? と思います。実際、走りで選ぶといえば、シビックを選ぶユーザーが多かったと思います。

仮にFRで発売されていたとしても……?

振り返ってみるとデザイン的なアイデンティティの薄さ、そしてFRが採用されなかったことの残念感がAE101を見たときの「満たされなさ」の要因だったように思えます。

くしくも「新レビンはFRで」という願いは、20年以上が経過した86/BRZでようやく叶ったなと感じました。まぁさすがに「作るのが遅いなぁ」と感じつつも、仮に90年代に新FRが出たとしても……。クーペが死んでいくバブル崩壊後の時代で、意味のある生き方ができたか? と考えると「難しかっただろうなぁ」と思う部分もあります。

今こうして86やGRスープラ、そしてセリカGT-FOURやカローラWRCの後継といえるGRヤリスが登場しているのは、非常に心地よいですね。あのころに働いていた若い車好きなディーラーマンの思いが継承されているようで、ちょっと懐かしい気持ちになります。

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この記事を書いた人

車大好き未就学児を持つ親。ミニカーやおもちゃ探しで気づいたこと、イベントに行って気づいたことなどをお伝えします。

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